SUPPOSE DESIGN OFFICE:優秀賞 / 上州富岡駅舎設計提案競技

とみおか市場


人を育てる駅づくり、まちを育てる人づくりわたしたちは、駅のはじまりにもどることから考えました。地域と地域を結ぶ接続点であった駅の起源に遡り、富岡駅をつくることで駅を中心としたゆるやかなまちづくりを行います。それはまち全体が駅とも言える状況をつくり出すことであり、まちの情報や産業を伝えていく機能を同時につくることでもあると言えます。私たちはそれを「とみおか市場」と名付けました。まちを読み取り、地域に点在する小さな要素をつなげていくことで、小さな公共性の先にある、新しい公共性をつくります。まちの人々と駅をつくることについて、考え方自体を設計することで、新しい駅としての姿を、まちの人々と考えていきたいと思います。



「市民が中心となった駅づくり」
人づくりをすることが今回の提案において不可欠です。設計の段階以前から、まちづくりの最初の担い手として「富岡サポーター」を育てる必要がありました。そこで、富岡市民自身に富岡の魅力を知ってもらい 、舞台で活躍するためのキャストとしての力を付けていきます。まちの人が力強くあることで 、 「建築」ではなく「人」が観光客や地元住民たちを迎えます。

「舞台」
人が活躍する舞台をつくることができます。状況や環境によって変化するこの「とみおか市場」は、まちの人がおとずれるたびに違う表情を見せ、観光客だけでなく地域住民の活動拠点として機能します。

「富岡製糸場にならった構造」
この駅とその前に広がる市場空間の象徴である大屋根の構造は、市場と人々の活気を映し出す背景として計画されています。誰もが知っている切り妻屋根のカタチをスケールアップし、薄いアルミハニカムパネルを極細の柱で支持するディティールレスな構造システムは、屋根のカタチの抽象性を上げ、この場所のモノではなくコトを際立たせます。

「見えない壁」
この建築は、建物を支える最低限の薄い屋根と細い柱のみで設計されています。壁によって機能を押し込めるのではなく、人のつくりだす領域の「見えない壁」によって空間を定義することで、様々な活動を許容し、建築が自由に解放されます。それは、まち全体が駅と呼べるような状況をつくりだすことでもあります。



「小さな公共性」
今までの公共建築はその役割を建築というモノ自体に依存させ、人が本来関わらなければいけないコトから逃げるようにつくられてきました。富岡のまちや人々の活動を調べる中で、建築物のみでは駅が成立しないことに気づかされました。駅の起源のような人に寄り添う力弱い状態をつくることが、富岡のまちづくりに寄与し、世界遺産登録を目指す富岡製糸場にとっての新しい顔づくりへとつながります。まちの人々の力強さと、背景に徹する建築の弱い存在によって、人と建築とまちを結ぶ新しい「小さな公共性」をつくることができると考えています。




プレゼンテーションボード(PDF)