山縣武史建築設計:佳作 / 上州富岡駅舎設計提案競技


新しい富岡駅舎は、シンプルで使いやすく耐久性があり、使い込むことでより体に馴染んでいくような、これからの富岡の街をつくるための「道具」としての建築がふさわしいと考えました。富岡製糸場がそうであるように、年月を重ねることで表情の深みを増し、やがて街の風景となるような駅舎を、構造体そのもののような、最も単純で、最も明快な建築で実現したいと考えました。


- PC 製の壁柱と木造のフラットルーフによる架構
自立するプレキャストコンクリート製の壁柱の上に、地産杉の無垢材を使用した屋根を架け渡し、全体を構成します。門型の架構は鉄道建築としての細長い形態を生かした見通しの良い内部空間を生み出し、富岡製糸場への玄関口にふさわしい、シンプルでゆとりのある駅舎空間をつくり出します。杉の無垢材でつくられた木造屋根は、年月を重ねるごとに表情の深みを増し、薄く強固な壁柱は、優れた耐久性をもって、屋根と、駅での人々の多様な活動を支えます。



- 街と鉄道、双方に開かれた駅舎空間
反復する壁柱に挟まれた奥行きの浅い駅舎空間は、街と鉄道の双方にほどよく開かれており、駅で行われるさまざまな活動が、駅前広場からだけでなく、上信電鉄を利用する人々にも開かれたものとなります。深い軒をもつ軒下空間は、街の大きな縁側として、富岡に暮らす人々と訪れる人々が共に寛ぎ、語らうことのできる場所となります。


- サードプレイスとしての「イベントホール」
待合室を、「イベントホール」、「コンコース」、「観光情報スペース」の3 つのスペースに分割します。各スペースが役割を分担することで、待合機能を充実させ、地域の交流拠点としての多様な利用に応えます。「イベントホール」は、街のサードプレイスとして、これからの富岡を象徴する場となります。


- 自立するPC 壁と木造屋根による軽快な構造
厚さ200mm のPC 製の壁柱は、建物の水平力を全てまかなっており、内部の自由なプランニングを可能にしています。地産杉の無垢材を使用した木造屋根は、スパンを飛ばし、軒を出すために働いており、柱の出ない広々とした軒下空間を実現します。


- 時を経てシンボルとなるフラットルーフ
地産杉を使用した木造のフラットルーフは、年月を重ねることで美しい飴色に変わっていきます。富岡製糸場や富岡倉庫に架かる古く大きな屋根のように、富岡に住む人々と訪れる人々をやさしく包み込み、時を超えて愛される存在となります。

プレゼンテーションボード(PDF)